「全損」には2種類あります。技術的にどうしても修復できない「物理的全損」と修復費用が時価額を上回ってしまう「経済的全損」です。
「修理費」>「車両時価額(消費税込)」+「買替諸費用」となった場合に経済的全損となります。判例では「著しく超えるとき」としています。(名古屋地判平15.2.28など)この時に修理費相当額を求めても認められません。逆に修理可能である時に、買替を前提で賠償を求めたときは、修理費相当額が認められます。以前は買替諸費用を認めない傾向にありましたが、現在は諸費用を認めるのがスタンダードといえるでしょう。
経済的全損となった場合、買替差額が認められます。買替差額は、交換価格と全損車両を処分した金額との差額となります。処分価格は通常スクラップ価格となりますが、市況によりスクラップ価格での売却が困難な場合もあるため、控除すべき処分価格について実態に則した判断が必要となります。
時価額の評価は、「裁判上の鑑定」「オートガイド自動車価格月報」(レッドブック)「中古車価格ガイドブック」(イエローブック)「(一財)日本自動車査定協会の査定」「減価償却に基づく計算」によるものなどがありますが、特殊な車両、古い車両などでは交換価格の推定が難しくなり、損害算定が困難となります。
買替諸費用の内訳は、登録・車庫証明・廃車の法定手数料相当、及びディーラー報酬部分(登録手数料、車庫証明手数料、納車手数料、廃車手数料)のうち相当額、並びに自動車取得税が損害として認められます。
事故車両の自賠責保険料、新たに取得した車両の自動車税、自動車重量税、自賠責保険料は損害として認められませんが、事故車両の自動車重量税未経過部分(リサイクル法により適正解体され永久抹消登録され、還付された分除く)は認められます。