修理技術上の限界から、修理してもなお車としての機能、外観が完全に修復せず、事故前と比較して価値の減少がある場合にはその減少分(評価損)が損害となります。但し、機能や外観は回復していて前記の意味での損傷がなくとも、事故歴や修理歴によって商品価値が下落することが、市場では一般的・・・というより私の感覚としては常識です。そのため評価損が認められる例があります。判例(東京地判S61.4.25)では、
評価損は損傷車両に対して充分な修理がなされた場合であっても、修理後の車両価格は、事故前の価格を下回ることをいうのであるが
●技術上の限界から、顕在的に、自動車の性能、外観等が、事故前より低下すること、
●事故による衝撃のために、車体、各種部品等に負担がかかり、修理後間もなくは不具合がなくとも経年的に不具合の発生することが起こりやすくなること、
●修理後も隠れた損傷があるかも知れないとの懸念が残ること、
●事故にあったということで縁起が悪いということで嫌われる傾向にあること
これらの理由により、中古市場の価格が事故にあっていない車両よりも減価することをいうものであると解される。
としています。
また、被害車両を売却せず使用しているから、交換価値の減少は現実化しておらず、具体的売却予定が無ければ評価損は認められない、という趣旨の保険会社の主張に対し判例では、車両を使用している限り、その損害が現実化しないとして損害額の算定に対し全く考慮しないのは被害者に著しい不利益を負わせることになって妥当ではない、としています。(東地判H8.3.6)
それでは具体的な損害額の証明ですが、
●時価額の差額
●自動車査定協会の減価額証明書の額
●修理費の一定の割合の額
などが認められる場合があります。判例では特に決まったものはなくケースバイケースです。
修理費の一定額の割合は、2~3割程度が多いようです。自動車査定協会の減価額証明書の代わりに販社などのカーチェックシートでも減価額は出せますが、以前の記事でも書いたように自動車査定協会の減価額証明書を取得するのが望ましいと思われます。実際はこの2つの額によるものが多いのではないでしょうか。
時価額差額は事故前後の額を立証する必要があり、相当の根拠がないと難しいのではないかと思います。
評価損の請求に関しては、判例でも評価損を否定しているものもあり、裁判によらず保険会社さんへ請求する場合、特に相当入念に準備し万全を期す必要があると思います。