修理が相当な場合、適正修理費相当額が認められるわけですが、どのあたりが「適正」な範囲なのでしょうか?主に塗装について書き記していきます。
例えば右斜め後ろから軽く接触されたとしましょう。フレームなどに損傷はなく、修復歴にはあたらない程度の修理のみです。リアフェンダーの部分的な板金修理(塗装含む)が行われました。しかし、フェンダーの新たに塗装したところと既存の塗装部分の色むらが気になります。このような場合、車体全部の全塗装は認められるのでしょうか?
判例では、基本的に特段の事情がある場合以外、認めることには消極的といえると思います。認めたものとしては、右前部が大破したメルセデス500Eの修理について、外観の損傷が著しいことから全塗装を必要相当として認めた例。(京都地判H5.10.27)キャンディーフレーク塗装を施した車両の部分補修では、被害車両の塗装方法が特殊であり,技術的に色調や光沢の違いを解消するのは困難として、全塗装費用を認めた例(東京地判H25.3.6)などがあります。
ちなみにキャンディーフレーク塗装の件では、趣味嗜好の対象としてある程度の一般性を有していることに加え、所有者がいかなる加工を施しても法令に違反するなどの特段の事象が無い限り、法的非難の対象とする理由は無いとして、過失相殺の法理に基づく減額をしませんでした。しかし、金メッキを施したバンパーが損傷した事案では、取り換え費用は相当因果関係のある損害であるものの、金メッキにより無用に損害を拡大させるものであるとして、過失相殺の法理により金メッキ修理代の5割が減額されています。(東京高判H2.8.27)ケースバイケースといったところでしょうか。
認められるのはなかなか難しいと考えられますが、もしご自身の修理の態様と似かよった有利な判例などがあれば、それをもとに保険会社との交渉材料にしてみるのも良いかもしれません。もちろん今回書き記した塗装だけでなく、ボディ交換、部品交換などの例もあります。(当事務所でも参考資料等の作成はできますが、行政書士は示談行為などは一切できません。)
今回ご説明させていただいた塗装の事案ではないのですが、関連する私の経験したお話をさせて頂きます。行政書士業務ではなく、以前に無償で知人にアドバイスしたお話です。知人は数年前、信号待ちで追突されバックパネル、バンパー、リアフロア交換の修理となる事故に遭遇いたしました。その際、マフラーも折れ曲がり交換が必要となってしまいました。かねてからイカしたマフラーに交換したかった知人は、修理を依頼したディーラーを通し、少しお高い社外マフラー(純正系列のアフターパーツメーカー)で交換してもらえるように相手方保険会社と交渉したのですが・・・
結果はダメでした。そこで純正と社外品の差額を支払う条件で交渉するようにアドバイスしたところ、あっさりOKとあいなりました。当然といえば当然なのですが、原状回復以上の利益を得させることはできない、ということですね。これが大前提ですね。